お内裏様の着物(袍)の柄 その四
この写真の男雛は、襴の上の部分の柄も横向きです。帯より上はたて柄になっています。
男雛の装束は束帯と呼ばれるものが一般的ですが、その装束の上着にあたる袍(ほう)の下部に襴(らん)という部分があります。歩きやすいように、左右に蟻先(ありさき)という遊びの部分がついています。雛人形ではこの襴の部分の文様が横向きになっているものをよく見かけます。これは、単に裂地(きじ)を裁(た)つときの都合だけでなく、実際の装束を作るときこの欄の部分だけ縦の裂地を横向きに用いることからそうなったということです。身頃とは違って、この襴は束帯の裾(すそ)をぐるりと取り巻くように縫い付けられますので、裂地を横向きに用いるのです。
もちろん、実際の装束のときにはこの部分だけは文様が九十度横向きに織られ、上部の文様と向きが合うようにします。一番傷みやすい部分ですので、直すときにこの部分だけを交換できるようになっているのかもしれません。しかし、人形の場合は充分に裂地の幅があるので、裂地の縦横より文様で合わせた方がいいと思います。ただ、裂地を無駄なく用いるためであれば、文様によっては合理的でいいのかもしれません。「人形なので」文様で合わせた方が良いように思いますが、こうしたちゃんとした理由があるので一概に「おかしい」とも言えないのです。まさに重箱のスミ的なことがらです。 ーつづくー
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